編集後記

 冷たい雨の降る年の瀬の日曜日。編集会議後恒例の小宴会は、鍋ということになった。さえずりながらたむろしている若者たちをやりすごし、落ち着いた店構えの暖簾をくぐる。席に着くと、茶髪に和服のお姉さんが注文を取りに来た。メニューから顔を上げ、ちゃんこ鍋を注文する。コンロがしつらえられ、なみなみとだしの入った鍋が置かれた。やがて運ばれてきた大皿には、あふれんばかりの具材が盛られ、さらにその上には、カニの脚や甲羅が無造作にちりばめられてきらきら光っている。
──刺身でもいけますから。しゃぶしゃぶでどうぞ。
 先ほどのお姉さんが少し自慢げに言う。だしで汚すのがもったいないほどの逸品だった。そぎ切りにされた脚にみっしりと詰まった甘い身が、我々を無言にした。徹底的に虐げられた鍋が、後に残った。同人の一人がつぶやくように言った。
──一人で暮らしていても、何の不満もないけれど、不便なことはいくつかあるわ。一人では、外で鍋を食べられないことも、そのひとつ。
 ささやかな我らが同人誌もまた同じかもしれない。今回、三作品、それぞれの個性を際だたせつつ、「せる」という鍋の中での饗宴を、是非。       (G)


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