編集後記

  編集後記

 かつて噂の真相なる月刊誌があった。かなり売れていたにもかかわらず、休刊されて二年ほどになる。誌名のとおり奇々怪々な出来事のスクープ記事や告発記事で誌面を埋め、政財界はもとより芸能界から闇社会にいたるまでを網羅していた。さらには文壇事情なる頁など興味をもって目を通したものだった。
 ところでこの一年ほどの間メディアを賑わしている様々な現象、昨年の劇場型と評された刺客選挙から耐震設計偽装事件さらにはライブドアの顛末。これらは一昔前なら想像もしえない事柄ばかりだ。もしも先述の噂の真相誌が続刊されていたら、増刊号を出すばかりの繁盛ぶりだったかも知れない。いやむしろ奇々怪々ばやりで、逆に新鮮味がなくなっていたかも。
 言い古された言葉に、事実は小説よりも奇なりとか、けだし名言だがいまや小説世界よりも現実世界の方がずっとはるかに奇々怪々なのは周知のことといえる。そんな状況下において小説を書くということは、この途方もない現実への挑戦だと思えなくもない。
 今号は、はからずも女性の作品ばかりの揃い踏みだ。それぞれ書き手のエネルギーが圧縮された誌面になったと思う。(さ)



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