編集後記

 職場に出入りする写真屋さんがいる。「写真屋さん」というと、写真家と言ってください、と訂正されたと言う。確かに違うことは分かるのだけれど、どう違うのかハタと考えた。そして、彼は芸術に携わっているのだというちょっと恐れに似た発見に行き着いた。その自負が、彼の職業に対する高揚感を支えているのかも知れない。じゃあ芸術てなんなのだ、とまた考えた。そして、それは、日常の中から非日常を取り出す行為というか、日常を篩いにかけて表現し、もっと内部の自己に出会うという、できればその水脈は時空を超えて本質の世界にゆきついて欲しいという、そんなことではないかと。ま、芸術はやっぱり恐れに似た大変なことなのだ、と思う。日常の平明な現実からなにかを切り取る、という行為は、切り取りかたによって、どんなことにもメッセージが込められ、方法や視点によってそのものの純度や、質やオリジナリティや、陰影が見え始める。
 私たちも、この場所で自分に出会うためのネクストワンを目指している。今回のネクストワンは、どんな合評会になるのか。共感し、反発し、見えないものへ沈黙し、読む行為も、自己の表現に関わっている。                       (W)



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