二十一世紀幕開けの年の六月に入院し、七月に手術を受けた。四十六歳の誕生日を前に人生初体験の入院。もちろん、手術も初めてである。開腹手術の名称は、膀胱全摘出・自然排尿型回腸膀胱形成術。例えてみれば、ゴム製の膀胱を布製の袋に置き換えるような内容である。背に腹は変えられない。腹の中は、デフォルメが効くそうだ。
八月五日に退院して、翌週フィットネスクラブの会員になった。
リハビリ増進の目的もさりながら、しばらく自宅待機を命じられ、時間がたっぷりできたことが、フィットネス通いに入れ揚げるきっかけとなった。
以下は、私のウェブサイトに「禁煙日記」と題して掲載したテキストを編集したものである。読者は、特定少数のおなじみさんであるため、デスマス調を原則としている。
なお、私のモットーは、「人生塞翁が馬」である。
■心の前にからだ(八月十日)
東急スポーツ・オアシスの会員になりました。
せっかく帰り道にあるのだから健康づくりのために通わないとと思いつつズルズルしてましたところ、突如のリハビリ生活突入で決心。
入会の担当さんは、清潔感満点のおねえさん。彼女に今日現在の小生の体の具合を説明。お客さんによくいますよ、てな顔色で応接してくれたので気が楽になった。
さぁ、今日から自称エクゼクティブ・ニューヨーカー。
■発汗の後は庶民的エクゼクティブ(八月十四日)
連日プール&ジム。午前中、水中ウォーキングのプログラムに参加。五十人近い参加者中男は、小生たったひとり。
さすが平日の午前中は、妙齢のオクサマだらけ。平均寿命世界一はこのあたりにある? ま、ともかく腰のあたりがスカスカしている小生には、水中でモガクのが一番効果ある感じ。ストレスも飛んでいくっし。
ワークアウトして、あべの銀座商店街の大和園で焼肉定食。先週は、こういった濃い料理には食欲がわかなかったのに、やっぱり汗かくのはグー! 生ビールにレバーも追加。お昼からモリモリでした。
■水中キックでワンツー・ワンツー(八月十八日)
だんだんフィットネス体験記に、模様替えしつつあります。水中ウォーキングよりきつそうな「水中キックボクシング」三十分を受けました。
カッパのミズカキみたいな平べったいグローブを両手にはめて、エイトビートのBGMに合わせ、上肢でジャブ・フック・ぐるぐるまわしとか、下肢で膝蹴り・前後左右にキック、ついでにツイストとジャンプ。
インストラクターさん(男性)がココゾというタイミングできばりあげるので、こちらもついついがんばって、もがきまくりました。男性若干名。ほとんど妙齢の女性。
ロッカールームの鏡に映るみずからの体、結構「逆三角形」です。まだまだ見れるよ、うん。
■つぼバー(八月十九日)
今日もフィットネス体験記ですいません。
「つぼバー」やりました。
韓国足つぼマッサージで使われるような木製の突起物がヌンチャクもどきのバーに合計四個突き立ててある「つぼバー」という器具の使用方法を教えていただく五十分の癒し系のコース。エクササイズとしては簡単しごくでありましたが、肩・腰のコリには即効。テコの原理で結構な圧力が各局部にかかり気持ちEイクイクでありました。
■太極拳(八月二十日)
エクササイズ通いも九日め。
本日は、太極拳五十分。上海に行ったとき、公園でたくさんの人民による実演を見た経験があり、これなら、なんとかなるやろう、と参加。
出だしは、柔軟体操でしたが、 気功に入って姿勢のとり方がわからない。
「頭から背中がつりさがっているように」「肩は、なで肩で、しまいには肩がないような感覚になるように」「両手はひじをすこし落として横に水平に」「両足は肩幅より開かない、つまさきはまっすぐ平行に」
次が「両手を胸の前にだして大きなボールを抱きかかえるように、あるいは机に置くように」「やっぱり肩の力を抜いて」
いくつかのパターンの静止ポーズの後、両手を前に差し出すポーズをとっていたところ、おにいさんインストラクターさんが小生に近づいてきて、手のひらをさしだす。おにいさんの手のひらと小生の手のひらの間に空間があるのに、手のひらと手のひらの間に、電気が走る。
「きてますね、かなり」と呪文のように一言いって、隣の人に向う。しばらくして、胸の前でボールを包み込むように左右の手のひらを対面させるよう指示される。ビンビンと磁場ができているではないか。
これが、気か!
不思議、不思議、摩訶不思議。
実際に体験して、はじめてわかる「気」の存在。
やっぱり私は、病人なのか。 はたまた上海のお年よりたちと同じく 毎朝公園で太極拳ダンスを踊る仙人となるのか。
■用意不用力(八月二十二日)
わが国における太極拳普及第一人者の自叙伝を阿倍野喜久屋書店で見つけたので購入。おとといアマゾン・ジャパンでNHKのビデオをオファーしましたが、理屈は理屈で知っておくのが肝心のはず。
■さぁビデオ学習だ(八月二十三日)
アマゾンで注文したNHKビデオ「入門シリーズ・健康になる太極拳」が到着しました。ネットて、なんて便利なんでしょう(笑)。
ラジオ体操は、動きがシンメトリーなので覚えやすいんですが、反面あきやすいし、習熟度を図りがたいところがありますが、太極拳は、動きが複雑で、それぞれ「馬のタテガミをすく」「鶴が羽根を云々」とシンボライズされていて、想像力を刺激するし、かつ、「気」の発生がレベルアップされていくはずです。
「肩の力を抜く・抜きき」って、がんばります。
■とうとうエアロビに挑戦(八月二十四日)
プログラムでは、初めての方むけの呼び文句のある三十分のエアロビクス・エクササイズに参加しました。インストラクターさんが呼び込みに苦労されていて、ちょうど敷居が低い状況でした。
レッスン・ルームの奥とその向かって右の壁二面は、全面鏡張り。鏡に映るわが身に思わず、にやけてしまいました。
昼間からこんなところにいる働き盛りのおっさん。
にしてはスマートなんだよね。
動きは、そこそこついていけたけど、ストレッチの体の柔らかさに関係するエクササイズは、きついきつい。横の鏡に映る背筋のラインがみっともないで、おっさん。
■おはよう。凹ちゃん(八月二十五日)
七月九日に生まれた新膀胱・凹ちゃん、四十七日めを迎えました。
退院時にはまだ腰は、すかすかギコギコ。凹ちゃんは、しまりのない、よちよち・だらだら・もれもれ運転でした。
日にち薬とはいえ各種エクササイズのおかげで体調が整ってきました。特に太極拳レッスンをうけてから凹ちゃんの成育めざましく、就寝時の成績が日に日に向上しています。
太極拳の用手(スワイシュ)の動きが、腰の血行・臓器の気をよくしている実感があります。
■深呼吸ooo000○○○(八月二十七日)
エアロビクスから太極拳まで各種レッスンかじりましたが、すべてに通じるのがウォーミング・アップとクール・ダウンに行う深呼吸。普段ため息はあっても 意識的な呼吸はできてなかったことを今さらながら反省させられる。
手術後内股に激痛が走ったとき、通り過ぎるまで深呼吸することで緩和されました。痛み止めの薬も効かないぐらいで、深呼吸するほか対策がなかったけれど、リラクゼーション効果と血行あるいはリンパの働きを促進する効果があるように思う。
このサイトに訪れる方のリラクゼーションのために深呼吸を呼びかけるアニメーション・タイトルバックを作成する。
1コマ さぁみなさん
2コマ しっかり吸って
3コマ 吸って
4コマ 吸って
5コマ もうひとつ吸って
6コマ〜8コマ 吐き出せ〜〜〜〜
(見りゃ解る)
■体脂肪率(八月二十八日)
フィットネス・クラブで体脂肪率などを測定しました。
四十六歳、男、身長百七十四センチメートル、体重六十一キログラム、体脂肪率十五%。
禁煙継続八〇日経過、五年生存率四十%(かもね?)。
■FIN・人生の夏休み(八月三十一日)
宣告・禁煙・入院・手術・退院・リハビリで六月七月八月の三か月綴ってきた「禁煙日記」
禁煙、入院記録、フィットネス体験記と日記のテーマが一貫しているようで不連続な内容となりましたが、いわば、人生の夏休み。ここらで一区切りにします。職場復帰もまずまずの滑り出しです。
以上、長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いかがでした。
日記ですので、思い込み表現が多かったと思います。
塞翁が馬のタテガミをなでてるんです、毎日(謎)。
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