編集後記

 

はるばる来たなあ、というのが正直な実感である。創刊号を発刊したとき思ってもみなかった五〇号に到達した。一九七八年から二十年間かかっている。この間に同人のメンバーの変動も当然あって、多くの人が加入し、そして抜けていった。創刊号から続いている人にとっては、確実に二十歳、年を取ったことになる。
 お金にもならないことを、というより印刷代を負担しながら、金銭的には一文の得にもならないことをしているのである。世間一般から見れば、まったく奇特な、何ともアホらしい集団に見えることだろう。だからこそ、書き手は自由に作品を書ける。何物にもおもねることもなく、それぞれの自己の内にある自分にとって書きたいことを表現することが出来るのである。
 作品を発表するからには、多くの読者を獲得したいと思う。自己と同時代の人々に広くメッセージを伝達したいということは当然である。これまで、「せる」を手にされた、その時々の多くの読み手に、あらためて深く感謝したい。
 五〇号は到達点であるとともに通過点である。これからも「せる」の書き手達は、作品を書き続けていくし、新しい書き手も加わっていくだろう。次のターニングポイントは一〇〇号である。あと二十年でそこまで到達できるはずだから、まだほとんどの人は生きているにちがいない、と思う。一〇〇号をめざして「せる」という船が、今、新たに出帆する。 (尼)



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