編集後記

  こちらの質問に自然な文章で答えてくれるChatGPTや、イメージしている画像を言葉で伝えると、イメージに添った画像を出力してくれるStable Diffusionなど、生成AIと呼ばれるシステムの登場で、にわかにAIを巡る議論が活発になってきた。手持ちのパソコンで簡単に利用できるため身近になったことも大きいのだろう。 AIに関しては四十年ほど前からシンギュラリティ(技術的特異点)ということがいわれており、人間の脳とAIが同レベルになる地点で、それが起こると加速度的にAIが進化していく。具体的にはAIが人間の関与なしに新たなAIを作り出していくという。そのシンギュラリティの起こるのが二〇四五年頃と見られていて、あと二〇年くらいでそれが来る。もっとも人間の脳にはカオスがあるのでAIが同等になることはないと考える学者もいて、実際に到来するかは不明である。 しかしChatGPTやStable Diffusionを使ってみると、何だか来そうに思えてくる。 『東京都同情塔』で今期一七〇回芥川賞を受賞した九段理江さんが記者会見で、五%ほどChatGPTの文章をそのまま使っていると述べて、いよいよ来たかと思った。その中身を詳しく語ったインタビュー(NHK)が面白い。生成AIが登場して主人公の質問に答える場面で、その答えをそのまま使ったのが五%の数字らしい。 <芥川賞作家の九段理江さんが、AIを活用して生み出した「東京都同情塔」は、生成AIをテーマにした珍しい作品であり、物語の中ではAIと人間の言葉の違いや、AIがもたらす負の側面についても描かれている。九段さんは、AIを使った創作の可能性に期待しつつも、人間が怠慢にならずにAIを上手に活用することが重要だと語っている。また、彼女の振る舞いからも、新しい時代の作家としての活躍がうかがえる。> 三七五三文字あるインタビュー記事をChatGPTに二百字以内で要約させたら、右記のようになった。なるほどうまく要約している。いずれ他の職業作家たちもAIをアシスタントのようにして作品を書いていくのかもしれない。 私が今欲しいのは文章を校閲してくれるAIである。校正はワープロの機能を使えば何とかなるが、書かれている内容にまで踏み込んで確認し、記述内容が正しいかどうかを見る校閲まではやってくれない。AIが人間の脳と同じレベルになったら、そういうAIができるのかも。そう思えば、シンギュラリティも悪くはない気がする。 (YO)