編集後記

 先日、テレビのバラエティ番組で昭和時代の話をしていた。友達や恋人の自宅に電話して親が出てきたら、ドキドキしながら相手を呼び出してもらう。クラス名簿に載っている住所を見て、こっそり家に行ってみる(呼び鈴を押す勇気はないので家だけ見て帰る)。平成中期に生まれた所謂Z世代の人達はかなり驚いていたけれど、私にとっては懐かしさを感じる出来事だ。

   本人と直接連絡を取る手段がないから、家に電話したり待ち伏せしたり。欲しい物はお店を何軒も回って探す。行きたい所は情報誌を読み、駅や代理店に行って段取りする。自分で手足を動かさなきゃ得られない不便な時代。だけど、行動力や逞しさは育ったのではないだろうか。もっと言えば、少々野蛮で無遠慮なオバサン力やオジサン力もそこから生まれたのではないか。

  そう考えると、Z世代の人にはオバサン力・オジサン力がなかなか身につかないかもしれない。時を経てZ世代が全盛になり昭和世代が少数派になったとき、その少々野蛮で無遠慮な力が小説を書くための力として再び武器になるのではないか、と思ってしまったりするのだ。

  今回の三作はそんな希望を秘めた作品かもしれない。                       (T)