人並み外れて食べることが好きである。起きている間、常に食べることを考えている。そんな自分にうんざりしていた。食べることより夢中になれるものを、ずっと探していた。三年前に見つかった。小説を書くこと、正確には、小説をどう書くかを考えることだ。食べることと同じくらい書くことを考えるようになった。ところが、書き始めると行き詰まる。書きながら、つまらないと自分で分かる。夜中、気づけば台所に立っている。何はなくとも米だけはある。その日に食べる分だけ鍋で炊く(多めに炊くと一気に食べてしまう)ので、ご飯のストックはない。考えるより先に手が動く。フライパンに油を引き、生米を炒める。あられもどきの出来上がり。さほど美味しくないのがポイントだ。食べ過ぎないですむ。書くことと食べることは一体であると思い知る。
本誌「せる」の会員になって一年弱。大晦日の二日前、初めての編集会議に臨んだ。何日も前から緊張していた。いったい何を言えばいいのか。自分以外の編集委員は皆、作者でもあった。互いの作品について率直な意見が飛び交う。いつしか自分も熱く語っていた。その高揚感は翌日以降も続き、年末にドカ食いしなかった。文学を語り合った経験が食べることに取って代わったのだ。(結)