今号の出版に携わる中で、編集委員が重責を担っていることを、ひしひしと感じた。前号合評会の作品提出締め切り時点で提出作品が一作しかなく、会員に作品提出を依頼するも、快い返事をする者はいない。今号の出版を見送ることも考えたが、先輩方が強い意志を持って百十一号続いている『せる』を、簡単に見送りなんて口に出せない。「提出作品がなければ、編集委員が責任を取って書くべきだ」との声が出てくる。冷静に考えれば当然のことである。ここは腹を括るしかあるまい。作品は三作必要である。提出してもらえる可能性のある会員にメールで依頼する。何とか三作品のめどが立つと、編集会議の場所と日程を決める。編集会議の当日、一作品に一時間程度を予定していたが、中途半端で済ませるわけにはいかないと、終わってみれば五時間を費やしていた。待機している次の作者のことを考えると、気持ちばかりが焦った。提出作品三作の枚数が、やや少ない。背表紙に『せる』の文字が読み取れるために長いエッセイを書いて、ページ数を稼ぐのも編集委員の役目である。
今号の三作、ショートあり、ミドルあり、ロングありで、長さはうまくバランスが取れている。内容の批評については読者に任せたい。 (上月)