この文章を書いている今現在、プロ野球界ではセパ共にペナントレースを終え、クライマックスシリーズ・ファーストステージが戦われている最中です。
セリーグでは今年も広島カープが圧倒的な強さをみせ、シーズン後半は実質二位三位争いの様相を呈しました。パリーグでも西部ライオンズが爆発的な長打力・華麗な守備で魅せ、若手中心のチーム作りが大きく花開きました。
仮にこの両チームが日本シリーズを戦うとすれば一九九一年以来のこと、当時は両者とも盗塁・スクイズを絡めた攻撃で得た小得点を堅い守備で守り抜くどちらもよく似たチームカラーで、正直に言って地味な感の否めない日本シリーズだった記憶があります。もしも今年同カードが組まれるなら、二十七年前よりはるかに魅力的な対戦となるはずです。
とここまで書いてきて、プロ野球に興味のない方には全く読むに値しないことをひしひしと感じています。なぜなら書いてる本人も実のところ心はどこかうわの空。
それもそのはず、わが阪神タイガースはとうとう十七年ぶりの最下位に堕し、三年前フレッシュネスを掲げスタートした金本政権は失意のうちに幕を閉じることとなりました。
筆者が今年九回甲子園に足を運び応援した観戦結果は二勝七敗。九月、十月にいたってはあまりに不甲斐ない試合内容に帰りの梅田駅までの車中、同行した友人と互いに無言、何か一言でも発すれば掴み合いとなる火薬の臭いで阪神電車内は充満していました。
テレビのスポーツコーナーでは朝昼問わず現阪神OB会長、川藤幸三氏が頻繁に生出演、来期に向け愛をこめた叱咤激励を飛ばしています。曰く、若手にみられる貪欲さの欠如、ベテランやFA選手に依存したフロント首脳陣の体質、外国人スカウトの低い眼力……。
主力のレギュラー選手たちを痛烈に評する元代打の川藤氏をみて(愛すべきキャラクターの氏にはとっても失礼ですが)思わずツッコミたくなる強烈な違和感、それとともに最近どこかで味わったことのあるこの感じ……。
そう、編集会議における自分自身の立ち位置について。筆力・題材・構成力等、自力でははるかに及ばぬ作品について意見を述べることへのいたたまれぬ緊張感、僭越感……。
そのせいもあってか会議終了後、京橋の居酒屋での二次会は開放感も手伝い非常に愉しいひとときでした。
行きつけでもあるその店に、この編集後記の文面を考えている今もひとり座って飲酒中です。
するとまたあの時の、晴れがましさと面映ゆさの入り混じった場違いな感が脳裏にまざまざと……。
「間違ってる!」
酔うと心の声が口をついて出る癖があります。
「何かおかしかったです?」
あわてて店員が飛んできました。
何事もなかったかのようにおもむろにイカの一夜干しを口に運びつつ、
「いえ、小説の話です」
(YT)