昭和四十六年にテレビで放映された「三人家族」(脚本 山田太一)のDVDを買った。竹脇無我と栗原小巻主演の恋愛ドラマである。第一話のナレーション「街で行きずりに美しい人を見る。あなたが女なら、どんな男性に眼がとまるのだろうか。しかし誰もそれを大げさに考えはしない。それだけのこと。十歩も歩けば忘れてしまう。好ましい人、若々しい男、しかし見知らぬ人。二度と会うこともなく。だが彼女だけは例外であった。彼女だけは……」で始まる。お互い好きでありながら、好きである気持ちを抑える切ない展開である。見ていて「ムズキュン」とする。
自分自身の高校時代を思い出してしまった。彼女を好きになればなるほど、会っていると楽しいはずなのに、胸の中が息苦しいような、痛いような状態になって、うまく話せない。会っていることが苦痛になってくる。そんな苦い経験が頭に浮かぶ。
三十分放映が二十六話の長編。恋愛シーンを十回以上繰り返し見てしまった。精神は半世紀前にタイムスリップ。若いときの苦い経験を懐かしく思う。
今回の三作。恋愛小説とは少し距離はあるが、小説とはこう書くべきだと、参考になる作品である。 (上月)